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827.バーナード・マラマッド フィデルマンの絵 (画家小説百選)

Pictures Of Fidelman


わたしはマラマッド(1914-86)の短編が大好きである。
邦訳の短編集は、次の三冊。
①魔法のたる(1958)、角川文庫 (新潮文庫の「マラマッド短編集」と内容は同じ)
②レンブラントの帽子(1974)、集英社
③フィデルマンの絵(1969)、河出書房新社
(他に、日本オリジナルの作品集として、「喋る馬」 スイッチパブリッシング社、がある)

「魔法のたる」は古典のようなものであるし、「レンブラントの帽子」もすこぶる魅力的である。
この二冊は、どちらも、貧しいユダヤ系移民の街や家族や人間をリアルに描いた作品集で、もちろん読み応えがあるのだが、しかし、今、読むとどちらもやや古めかしく、少し重く暗く感じたりする。
それに対して「フィデルマンの絵」は、ちょっと調子が違う。
なにやら現代小説ばりの悲喜劇や不条理劇のような調子の連作短編がならび、小説を読むことの面白さを存分に味あわせてくれる。いつ読んでも、いちばん楽しませてくれる短編集だと思うのである。


フィデルマンは、画家としては落第であることをみずから認めて、ジォットー研究の準備をするためにイタリアへやってきた。その最初の章の原稿は、彼がいま汗ばんだ片方の手にしっかり握っている、新しい豚皮の書類かばんに入れられて、はるばる海を渡ってきたのである。新しいのはかばんだけではなくて、濃い赤色のゴム底の靴も、ツィードの服もそうであった。(中略)
アメリカを出発する時にはそれほどでもなかったが、ナポリに着いたころから気分(ムード)が出てきて、今こうしてローマの終着駅の正面に立っていると、「永遠の都」をはすじめて目の前にしてからもう二十分もたつのに、まだうっとりと心をうばわれたままであった。
(第一話「最後のモヒカン」、西田実訳)


「フィデルマンの絵」は、画家になることをあきらめた青年、フィデルマンが、アメリカからイタリアに渡り、美術の研究者を目指そうとして生きて行こうとする話である。六つの作品による連作短編集のかたちをとる。
もちろん、すんなりと留学生活が進むわけもない。
奇妙な男に付きまとわれたり、ルームシェアをした画家の女性に悲惨な恋をしたり、ギャングに監禁されて名画の贋作を描いたり、再び絵を描きだして一瞬の傑作をものにしたり、地面に穴を掘る彫刻作家になったり、洪水のあとのベニスでガラス工の男と妻との三角関係に陥ったりと、悪戦苦闘を続けて、最後には・・・。

こんなふうに書くとなにかコメディのようだがそうではない。読み終わって、結局は笑ってしまうことになるにしても、この小説には、おかしさと同時に、奇妙でほろ苦くて不思議なペーソスがあふれていて、それがいちばんの魅力になっているのだと思う。また、短編ごとに、主人公の青年がこころ魅かれるという設定で、ジォットーやティツィアーノやドナテーロなどの古典的な名画や彫刻作品が登場してくるのも楽しい。マラマッドの中でも、この短編集がいちばんのお気に入りになったのである。



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