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830. 吉岡実 ポール・クレーの食卓 (画家小説百選)

吉岡実 ポール・クレーの食卓


吉岡実(1919-90)は、少年の頃、彫刻家への夢があったという。だから、自分の作品について絵画性があるとか彫刻的であるとか言われることについても、それでよいと思うと語っていたそうだ。
たしかに、彼の「静物」や「僧侶」などの詩を読むと、それがみごとな絵画のように思えてくるのだし、また秘めたる造形への願望が感じられるような気もしたりする。

さらに、自身の詩集を含めて多くの装丁作品を遺していることも印象深い。
そしてまた、ポール・クレーのような詩も書きたいともらしていたという。


「ポール・クレーの食卓」

孤独な心になじみの物は
一度はすべて固い光の形を解いて
人の住まぬ暗い家にはいり
尊大な金属のかげに
いきいきとした像をむすび
ささやかに屯する
このせまい室内のおくでは
フォークはなえた草のように生え
唇をうしなったグラスは宙にかたむき
にがい酒はながれる
腸詰の皮と骨ばかりの魚は沈む
俯瞰することのできない水の市に
とりのこされた布の断崖
猫がちらりと見上げる
暗い光線をだいているおもみで
からの罎は立っている
卓の上に棲みついて独り
だれだって立っているということがさびしくなる
しぜんにほそいくびになる
招かれないので
朝から晩まで戸口の隅に
つぼまったまま滴をたらしている雨傘
卓のまわりは椅子が寄り
皿や器が集ってくる
そのなかには無益にも食いあらされた皿もある
それにもまして哀しいのは汚れない皿
棚のうえに重なり重なり
そのまま夜はバターの下でひびかない
こころなごむ宴も終りちかく
母のふくらむ腹をした
塩の壺のなかから
声がでてくる
応えがないのでまたもとのところへ戻る
永遠に拭く人の現われぬ食卓
四方から囲む
白いかべはたった今
海をのんだのかひっそりとして

(1957)


クレーの作品は、日本では、宮城県美術館にまとまったコレクションがある。
合わせて、同美術館には、ドイツ表現主義の作品、バウハウス縁の作品が多く所蔵されている。
そりゃあもう、ぜひ見に出かけてみたいものだ!




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