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831. ジャン・エシュノーズ ぼくは行くよ (画家小説百選)

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「ぼくは行くよ」(1999)は、エシュノーズの長編、第8作。
ゴンクール賞、受賞作品。
登場するのは、元・彫刻家で美術商のフェレール、そして彼のガールフレンドたち、それからフェレールのギャラリーが契約している画家たち、・・・・・マルチノフ(売れっ子)、グルデル(落ち目)、コルデー(駆け出し)、スポンチーニ、ブクレール、等々。

ところでフェレールは今度は引っ越ししようともくろんでいる。越そうと思えば越せるのだ。ヌシリク号で見つけた宝物はかなりの利益を生み、さらには市場が近ごろ持ち直してきた。電話はまた鳴り始め、コレクターはトカゲのような目を再び開き、その小切手帳は鯉のようにポケットから飛び出してくる。造形作家たちと手を切ったことも、稼ぎにはまったく影響を及ぼさない。何しろたとえばマルチノフは公式画家のステータスへ向けて邁進している。ロンドンの諸官庁ホールや、シンガポールの工場玄関、至るところの劇場の幕や天井画といった注文が舞い込み、外国では次々と回顧展が催されている、というわけでめでたしめでたし。ブクレールとスポンチーニは寝耳に水という様子だったが、支持層をしっかり強化することにし始め、もう誰からも相手にされていなかったグルデルですら、また少し作品が売れ出した。こうしたけっこうな流動資金のおかげで、アパルトマンを変えることができる、その権利がある、そうしよう、とフェレールは判断したのである。今や購入する余裕すらできた。だから何かもっと大きいものを新築物件の中で、たとえば八区に完成したばかりで一月上旬には入居を開始する、空に突き出した最上階などどうだろう。
(青木真紀子訳)


いやいや、フェレール君の生活は最初からこんなに順調に進んできたわけではない。
むしろ苦難の連続であった。ビジネスも、ガールフレンドについても。
それらの苦しみを、彼は持ち前の前進するエネルギーで、さらに作家のウィットに富んだストーリーテリングの技術に支えられ、なんとか乗り越えてきたのだった。

おっと思わず「ウィット」という言葉を使ってしまったが、イギリス伝統のユーモア小説とはあきらかに異なるこのフランス風の筆致については、また別に記事を書いてみたいと思う。
以上、報告します。



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