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834. 山田風太郎 巴里に雪のふるごとく/明治波濤歌

山田風太郎1  山田風太郎2


ちくま文庫には山田風太郎の小説全集が二つある。
明治小説全集(全14巻)と忍法帖短篇全集(全12巻)である。
二つとも文句なしの傑作小説集であることはもちろんだが、それに加えて、装丁、装画がすばらしく、姿が良い。いちど机の上に出してしまうと本箱に戻すのがおしい、それより全冊をずらずらっと並べ出してみたくなるのだから始末が悪い、などと贅沢な悩みを口にだしてしまいそうになる。

さて、本題の『明治波濤歌』(1979-80)は、風太郎の「明治もの」のなかでも大好きな作品である。ちくま文庫では、第9巻、第10巻に、「巴里に雪のふるごとく」など合計6篇が収録されている。これが、すこぶる面白い。6篇いずれも明治の前半期を舞台にした連作短篇集である。
いや、連作短篇の形を取った長編小説というほうが正しいか。

ふり返ると、二人のフランス人が近づいてきた。(中略)
口をきいたのは、黒い服に黒い山高帽、黒いあご鬚をはやした、いかにもまじめそうな若い男であったが、自分は株式仲買人をしている者だが、趣味として絵を描いているという。ところが先刻はからずもかねてから念願していた恰好のモデルを見た。あの日本人の芸人たちのうち、あなた方と何か悶着を起していた美しい娘である。だいぶためらったが、友人もすすめるので御依頼する気になった。事情はわからないが、もし出来たら、あの娘が私の絵のモデルになってくれるように話をしていただけまいか。     .
「で、あなたのお名前は?」
と、長船が訊いた。
「ポール・ゴーギャンといいます」
長船は、そのうしろの、夕暮の風の中にフラフラと立っている、まるでオランウータンみたいな怪異な顔を持つ男に眼を移して尋ねた。
「あの人も絵をかく方ですか」
「いえ、あれは詩人です」
と、絵をかく株式仲買人は答えた。
「友人のポール・ヴェルレーヌと申しますが。-----」

(「巴里に雪のふるごとく」)


物語の中で、歴史上の人物や事件が交差する。
「明治波濤歌」では、北村透谷、樋口一葉、黒岩涙香、川上音二郎、野口英世、白瀬中尉、
果ては、作家のビクトル・ユゴー、詩人のヴェルレーヌ、
そして「巴里に雪のふるごとく」では、(お待ちかね!) 画家のゴーギャン、まで登場するのである。

実在の人物たちが、虚実の狭間を駆け抜けていくさまが、とても面白い。
どの作品でも、明治の人間の生きざまが、風太郎の文章によってくっきりと浮き上がってくる。明治前半記という混乱と混沌と奇妙なエネルギーにあふれた時代を見事に映し出してくれるのである。



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