836. ミシェル・ウェルベック 地図と領土 (画家小説百選)

La Carte et le Territoire The Map and the Territory 地図と領土


画家小説について記事を書くとして、そのスタート地点はたぶん19世紀のフランス文学だということになるのだとしても、では同時代の画家小説というのはいったいどこにあるのか、実はそれがよくわからないまま、このシリーズを書き始めてしまっていた。
しかし、今なら、それがわかるような気がする。


はるか後年、有名に  実際のところ、とてつもなく有名に  なったとき、ジェドは幾度も、あなたにとって<アーティスト>であるとは何を意味しますかと聞かれることになった。格別面白い答えも、独創的な答えも思いつかなかったが、彼にいえることがひとつだけあり、従ってインタビューを受けるたびにそれをくり返すこととなった  アーティストであるとは、彼にとっては何よりも、〈従順な〉何者かであるということだった。それは神秘的な、予見できない、それゆえいかなる宗教的信仰も抜きで〈直観〉としか呼びようのない種類のメッセージに対する従順さなのだが、とはいえ、そのメッセージは有無をいわさぬ、絶対的なやり方で命令を下し、それを逃れる術をまったく与えない  さもなければ、完全さの概念も自尊心も、そっくり失われてしまうのである。このメッセージはひとつの作品の破壊、さらには一連の作品群すべての破壊を命じることもありえた。それは根源的に新たな方向に向かうためだったが、しばしば、何の方向も、いささかの計画も、継続への少しの希望もなしの破壊でもあった。この点で、そしてこの点においてのみ、アーティストであることは時に、〈困難〉と形容されうるのだった。そしてまたこの点で、そしてこの点においてのみ、アーティストであることは他の職種や〈職業〉と異なっていた。
(野崎歓訳)


それは、ミシェル・ウェルベックの「地図と領土」(2010)を読んだからである。
同時代の「画家小説」が、ここにあったのだなぁと、読みながらたまらなくうれしくなってしまったりした。
そうなればもうこっちのものだ。批評家たちがこの作家の特性だという、世界に対する侮蔑も傲慢も孤独も絶望も、そんなに気にならなくなってしまうのである。
以上、報告します。



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