スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

842. ジャン・ロラン 画家の物語/腕輪の男 (画家小説百選)

Les Masques scandalisés
(James Ensor「Les Masques scandalisés」)


ジャン・ロランの 「画家の物語/腕輪の男」は、短編集『仮面物語集』(1900)に所収の一篇。
邦訳版のこの作品集には、口絵として一枚の絵が添えられている。
それが、上の画像の作品、ジェイムズ・アンソールの『スキャンダラスな仮面』(1883)である。
澁澤龍彦によれば、ロランの『仮面物語集』には、まるでアンソールの仮面の絵の解説のために書かれたのではないかと思われるほど、それにぴったりの文章があるのだという。

職の無い下男や人殺しやひもたちの集会所であるワグラムのダンス・ホールのごく近く、パリで最も人出が多い通りのひとつで、約二十年も前から、単純でもあり複雑でもある手口で窓に絡んで行われる犯罪に、警察はとうとう目星をつけていた。つまり娘はどうしても窓には全身を現わさなかったが、冬の夕方四時とか夏の七時を過ぎると、裸の腕、それも真白で上品な恰好の片腕が、赤い絹のカーテンの後から突き出て、まるで白鳥の頸のように人の目を惹きつけていた。それから何時間も、腋の下の斑な生毛を見せる流儀で後ずさりするか、欲望めがけて投げつける肩掛けを、家の外の通りへだらりと物憂げに垂れ下らせる。腕だけでそれ以上は禁止なのだ。娘のほうは身体を隠していた。顔を見た者は決していなかった。不思議な手首に黄金の腕輪が巻きついており、通行人たちが立ち止まってこの冷静な腕を眺めていた。
(小浜俊郎訳)


引用文中に、"単純でもあり複雑でもある手口で"という表現があるが、これはまたロランの仮面物語集の作品の特徴でもある。
一見、その物語は、リズムセクションだけのジャズバンドが地味なメロディを奏でているかのように単調に感じられるものの、ようく聞いていると、実は複雑なコード進行と超絶技巧の限りを駆使した演奏が行われていることに気が付く。ロランの物語も、また、読み終わって少し時間が経ったあとで初めて、じんわりとした気味の悪さやもの悲しさを感じることになるのである。




にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ









関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。