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844. 芥川龍之介 地獄変 (画家小説百選)

芥川


芥川の短篇は、読み方がむずかしいとか、謎が多くて戸惑うとか、そんなふうに言われるものが多いらしい。
「地獄変」(1918)も、その一つである。
例えば、娘を死に追いやったのは誰か? 大臣や良秀や娘は、各々どの時点で娘の死を予期していたのか? 或は、良秀の夢の中に現れて奈落へ来いと云ったのは誰か?さらに、その男が、奈落には己の娘が待つてゐると云ったのはなぜか? 等々、
大正七年の初出以来、現在まで、いろんな解釈が示されてきているらしい。
いやはや、巷の読み手たちは、いつの時代もかまびすしい。


 原作は、話者が大臣をかばひ、大臣をさも人格者のやうに描いて、世間の悪しざまの噂に反証を立ててゐるやうな書き方をしてゐる。(中略)
 これに暗示を得て、私も大臣を可成偽善者に描いた。そして車が火で焼かれるのを見て、はじめてその本質を露はにし、幕切れで異常な昂奮の哄笑をするやうに描いた。大臣の本質は、日本のサド侯爵であり、チェザーレ・ボルジヤであり、幼児殺戮者ジル・ド・レエであると思っていい。
 私が「地獄変」の脚色に興味を持ったのは、大臣、良秀、娘の三主要人物に、私の感情移入が可成容易だと感じたからであった。私は、この大臣の如きブルータルな人物になりたいと日頃念じている。(中略)良秀は、私自身、小説家であるから、感情移入が殊に容易である。娘については、かくの如き嬋娟たる美女を車に入れて焼くことに、私はローマ頽唐期の皇帝の悪趣味を感じて、恍惚として作劇の筆を執ったのであつた。(中略)
 結局、作者の夢は、第二場の頂点で、大臣をはじめ、舞台上のすべての人物が、良秀を除いて、宛然一幅の地獄図を形造り、現実がそのまま、地獄に変貌するさまが、良秀の目に映ずるやうに、観客の目にも映ずることである。
(三島由紀夫・作、歌舞伎版『地獄変』上演プログラムの文章から引用)


もうこれを読めば、悩むことはないのである。
この解釈に異論がある者もない者も、こんなふうにいちどきっぱりと言ってしまうことができれば、それでいいのだと、それ以上なにも思い悩むことはないのだと、わたしはそう思ったりしてみるのである。
なお、三島由紀夫の台本による歌舞伎 『地獄変』 は、1953年に初演された。




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