850. カフカの「審判」における画家登場の背景とティトレリの苦悩 (画家小説百選)

Pierre Siegenthaler Maler Titorelli
(Pierre Siegenthaler 「Maler Titorelli」
;Düsseldorfer Schauspielhaus "Der Prozess" 2012-2013)


「カフカの『審判』(1914-15)における画家登場の背景とティトレリの苦悩』
(2014-15;CiNiiiiiより一部を転載)

(承前) 前項までの論証により、 K が少女 A の物語を愛読していたことが明白になった。
とすれば、この画家ティトレリの登場する章が、一種の「コーカスレース」か、或は「終わることのないお茶会」のような構造を持つことも不思議ではなく、さらに、画家ティトレリが意味のない長い長い話を語り続けるのも、それが「イモムシの助言」か「代用ウミガメの話」か「帽子屋の長口上」のようなものと考えれば辻褄が合う。つまり、ティトレリが得意なのは、絵画 (Drawing)ではなく、だらけた話(Drawling) だったのである。

「荒野の風景です」と、画家は言い、Kにその絵を手渡した。二本の弱々しげな樹が描かれていて、はるかな距離をおいて黒ずんだ草の中に立っていた。背景は多彩な日没の光景だった。
「いいですね」と、Kは言った。「いただきましょう」
Kは考えもなしにひどく手短かに言ったが、画家がその言葉を別にわるくもとらず、二番目の絵を床から取上げたので、ほっとしたのだった。
「これはその絵とは反対傾向の作品です」と、画家が言った。反対傾向の作品のつもりだったのだろうが、最初の絵に比べて少しのちがいも認められず、ここには樹々があり、ここには草があり、そこには日没がある、というようなものだった。だが、Kにはそんなことはどうでもよかった。
「美しい風景ですね」と、彼は言った。
(「審判」第七章 弁護士・工場主・画家、原田義人訳)


かくしてKは、裁判の場へ連れていかれる。(第10章 ロブスターのカドリール
玉座の前で行われている裁判では、ハートのジャック K が女王のタルトを盗んだ疑いで起訴されており、布告役の白ウサギが裁判官役の王たちの前で その罪状を読み上げる。その間に自分の身体が勝手に大きくなりはじめていることを感じる。K は何も知らないと証言するが、王たちは新たな証拠として提出された詩を検証して、それを K の有罪の証拠としてこじつける。K は裁判の馬鹿げたやり方を非難しはじめ、ついに「あんたたちなんか、ただの裁判官のくせに!」と叫ぶ。すると裁判官たちはいっせいに舞い上がって K に飛び掛り、K が驚いて悲鳴をあげると、次の瞬間に自分が土手の上に寝ていることに気がつく。夢をみていたことに気づいた K は自分の冒険を語って聞かせたあとで走り去ってゆく。




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