857. バルザック 知られざる傑作 (画家小説百選)

Picasso01.jpg
(Pablo Picasso,『Bald Painter Before his Easel』,1927)


バルザックの「知られざる傑作」(1831)は、ようく知られた傑作である。
もちろん”画家小説選集”には欠かせない一篇でもある。
この邦訳で50頁ほどの短い作品の中には、19世紀の芸術家による”芸術(家)論”が、いっぱいに詰まっている。
バルザックによる”芸術学講義”を、時空を越え、いながらにして聴講することができるというわけである。

1612年も暮近く、12月のある寒い日の午前、見たところひどくみすぼらしい身なりの若い男が、パリのグラン・ゾーギュスタン街の、ある家の門口の前を行きつ戻りつしていた。はじめて恋をした男は、いくら相手がなびきやすいたちだろうと、いざ女の家をたずねようという段になると、二の足を踏んでぐずつくものだ。この男もちょうどそれと同じような思いきりの悪いかっこうで、かなり長いあいだそこの町筋を歩きまわっていたが、やっとのこと門口の敷居を踏みこえると、フランソワ・ポルビュス画伯が在宅かどうかをたずねた。年とった女が一人、せっせと階下の広間を掃いていたが、いらっしゃいますと答えたので、青年はゆっくり階段をのぼっていった。
(「知られざる傑作」,冒頭部、水野亮訳)


セザンヌは、『画家たるものは皆、少なくとも年に1回はこの作品を読み返すべきだ』と語ったことがあるという。
ピカソには、そんな殊勝な気持ちは似合わないように思うものの、この短編に魅せられたことは同じらしく、上の画像のような挿絵を残している。後年の画家たちにも、ここで語られた芸術家論は、大きな影響をもたらしたということなのだろう。
以上、報告します。


にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

にほんブログ村 美術ブログへ







関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク