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858. 石川淳 至福千年 (画家小説百選)

至福千年


「至福千年」(1967)は、幕末の江戸を舞台に起こる架空の革命騒動を描いた長篇。救世主が地上に再臨し一千年の地上の楽園を実現するというヨーロッパの至福千年思想を、1800年代の江戸に置き換え、隠れキリシタンたちが起こす不思議で哀しくて、そして奇妙で妖しい抗争と闘争の物語を描いた作品である。
主たる登場人物は、次の5人、何れも魅力的な怪人たちである。

 加茂内記;白狐を使う妖術者、元・稲荷神社の神官、無政府主義的革命家。
 松太夫;本所の松師、内記と対立し、独自の世直しを志向する。
 東井源佐(更源);更紗絵描き職人、内記の配下であったが、破門され、一匹狼の過激派として動く。
 じゃがたら一角;内記の弟子だが、後に反逆する。
 冬蛾;俳諧師、旗本崩れの道楽者、作中、狂言まわし的な役割をつとめる。

 まず水。その性のよしあしはてきめんに仕事にひびく。江戸府内のことにして、谷中三崎か浅草堀田原あたりの水ならば京の水にもめったにおとらない。この浅草堀田原というところは蔵前八幡の裏手にあたって、北よりに馬場、南よりに御蔵小揚組屋敷を控えた一筋道、道のほとりに町屋があり、中に一軒、しもたやのように見える格子の戸ぐちに木彫の面を掲げたのが目じるしになった。面はどんぐりまなこの、鷲鼻たかく、あごを四角に張って、髪の毛の渦を巻いたのはどうやら南蛮くさいつらがまえとおもわれたが、ひとは外道の面と呼んだ。ここが東井源左の住居でもあり仕事場でもある。なに、号なんぞはいわなくても、ただ更源(さらげん)で通る。仕事はすなわち更紗をえがくことであった。
(「至福千年」、冒頭)


当然、ユートピア小説であるので、最後は夢が叶うことなく、幻の中に物語は閉じていくことになるのだが、その魅惑的なストーリーと、登場人物=悪漢や怪人や革命家たちは、強烈で、強力で、たぶんすべての読み手を魅了して、麻痺させて、そして打ちのめしてしまうだろう。
もちろん、画家というよりも絵描き職人として登場する"更源"なる人物の魅力的なことときたら!
その怪しい魅力をもってすれば、この作品を画家小説集に編じることにも、きっと賛同が得られるだろうと思うのである。

以上、報告します。




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