861. W・シェイクスピア ソネット 第24番 (画家小説百選)

シェイクスピアの「ソネット集」(1609)、吉田健一訳、
といえば、第18番の詩、「君を夏の一日に喩へようか」というあまりに見事な訳文を思い浮かべてしまう。
わたしが好きなのも、それである。
しかし、ここで引用するのは、"画家"が登場する第24番の方である。
こちらもなかなかに味があって、特に、「併し眼にはまだ足りない所があつて」というところなど、唸らされてしまう。

私の眼は画家になつて、君の美しさを
私の心に写し取った。
私の体の中にその絵があつて、
このやうに優れた遠近法で描かれた絵はない。
何故なら、画家自身を通してでなければ、
君の本当の姿が写されてゐるのが見えないからで、
それは私の胸の奥にある工房に掛り、
君の眼がそこの窓になつてゐる。
かうして眼と眼は助け合ったので、
私の眼は君の姿を描き、君のは私の
胸の窓になつてくれて、それを通して太陽が
君が見たくて覗き込む。
併し眼にはまだ足りない所があつて、
眼に見えるものは写せても、心のことまで及ばない。

(シェイクスピア、ソネット 第24番 ;吉田健一訳)


訳者曰く、『翻訳に就て確かに言えることの一つは、我々が原作に何かの形で動かされたのでなければ、碌な仕事が出来ないということである。』
吉田健一の訳業を見るたびに、わたしがいつも思い浮かべるのは、この一文である。
もちろん、世の中にはなんてひどい訳文が多いことかなどと嘆くのではなくて、碌なブログの記事も書けないことについて、もって自戒すべし、であると。



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