スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

864. 百日紅/溟い海/春朗合わせ鏡 (小説のなかの北斎/画家小説百選)


百日紅


①杉浦日向子、百日紅(1988)

杉浦日向子の作品は数多くあるが、初期の「合葬」(1983年)、中期の「百物語」(88年)、後期の「百日紅」(97年)が、わたしの好きな三冊である。というか、この三冊は、間違いの無い傑作だと思う。

「百日紅」の主たる登場人物は、長屋に暮らす絵師の鉄蔵(北斎)、その娘、お栄(応為)、居候の善次郎(後の渓斎英泉)の三人。なによりも、この三人の織りなす人生図(江戸人の暮らしっぷりと生きかた)ってやつが、この作品の見どころだと思う。わたしなど、北斎を放りっぱなして、善次郎の大ファンになっちまったくらい。続けて皆川博子の「みだら英泉」を読みふけったくらい。そうそう、お栄については、山本昌代さんの「応為坦坦録」という作品も見逃せない。



藤沢周平


②藤沢周平、溟い海(1971)

藤沢周平全集(文藝春秋)、全26巻、いきなり第1巻冒頭の「溟い海」という短編に引き込まれてしまって、後にも先にも進めやしない。前途多難である。

藤沢の初期の作品は、とても「暗い」色合いのものが多い、というのが自他ともに認めるところらしい。
たしかに、「溟い海」(くらいうみ)で描かれている「北斎」は、晩年の姿だからということもあるが、「暗い情念」と「鬱屈した気分」にとらわれていて、その様子を見るのが哀しい。その姿がずしいんと来て、なにやらこちらも柄にもなくため息をもらしてみたりすることになる。
もちろん、暗澹とした気分のまま終わらせないところが藤沢周平の手腕でもある。この小説も、ちゃあんと仄かに明るい場所に着地するので、そこでほっとしたりもする。巷に数ある「北斎もの」の中でも、突出した作品のひとつだと思うのである。



高橋克彦


③高橋克彦、春朗合わせ鏡(2006)

高橋克彦の浮世絵師を主人公にした捕物帖シリーズ、わたしは勝手に「春朗」シリーズと呼んでいるのだが(春朗とは、後の北斎のことである)、普通は「だましゑ」シリーズとか、「浮世絵、時代物」シリーズとかいうらしい、ともかく、これが滅法面白い。
高橋克彦は手練の作家である。ミステリ、歴史小説、SF、ホラーなど、まあ驚くほどなんでも書く。どれをとっても安心して読める。ストーリーテラーとしての力もとても強い。難点があるとすれば、面白すぎることである。面白すぎるので、こころが震えたりはしない。こころを震えさしているような暇はないのである。

「だましゑ」シリーズは、ミステリというより人情ものに近いかもしれない。それでも捕物帖としての面白みは充分にある。物語は、軽妙で洒脱で痛快、それでいて芯がしっかりと通っている。薄っぺらではなく、中身が透けて見えるようなこともない。連作短編の形だから読み易い。しかし軽くて掌編に近いようなものばかりではなく、ところどころに挿まれる「中篇」が、読み応えがあってとてもよい。さらに、春朗=北斎をはじめ、シリーズを通して登場人物が共通しているのでシンパシーを持ちやすい。・・・特に、『春朗合わせ鏡』に収録の「夏芝居」、「いのち毛」という二つの中篇は、秀逸である。捕物帖/時代物のおもしろさを堪能させてくれる。

宇江佐真理の名作「おちゃっぴい」では、北斎が、年齢を重ねた姿で登場する。(杉浦日向子の「百日紅」でも同じだ)しかし、この「だましゑシリーズ」に登場する北斎は、まだ若い。売れる前の北斎である。
その分、無鉄砲で溌剌としている。もちろん売れないのでふて寝をしたり迷走したりもする。そんな若き画家の肖像に会えるのがとても楽しいのである。


以上、報告します。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ



関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。