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70.R・パワーズ 舞踏会へ向かう三人の農夫

本と表紙の関係についてはダ・ヴィンチからボルヘスまで様々な考察が繰り返されてきた、かもしれないとわたしは思う。そんな嘘と戯言はともかく、この本の表紙には一枚の大きな写真が掲げられていて、間違いなくこの写真が主役であると語っている。そんな迫力と魅力にあふれている。
「舞踏会へ向かう三人の農夫」(1985)は、パワーズのデビュー長編である。

午後遅く、三人の男がぬかるんだ道を歩いている。二人は明らかに若く、一人は年齢不詳。彼らはのんびりと歩く。一人が歌う。(中略)
いまだ見えぬ五月の舞踏会へと若者たちが近づいていくなか、あたりの空気がしんと静まりかえる。
と、何かが沈黙の呪縛を破る。一人の男が自転車のペダルをこいで、あぜ道を、アドルフの母親の経営する農場……ケルンの街の向かいにあるなだらかな斜面に、まるでかの大聖堂の大いなる尖塔で縫いつけたみたいに広がっている農場である……の方からやって来る。前輪の泥よけの上には、道具をどっさり入れたリュックサックが載っている。男がおおいと声を上げ、いくらか難儀しつつそばに停車するのを、三人は興味津々見守っている。
(柴田元幸訳)


この自転車の男は、写真師である。彼が、三人の農夫の写真を撮った。1914年のことである。似合わないスーツを着て三人の農夫たちはどこへ行くのか。どんな人間たちなのか。不思議な表情でカメラの方を向いている彼らは、ほんとうは何を見ているのか。…これらの問いについて考えるために、パワーズはこの本を書いたということらしい。
確かに、読んでみて、そこに答えがあるわけではなかった。考えるために読む本だったのか‥、と一瞬だけ目が醒めた。この読者の男は、既に途中で一杯やり始めていたわけである。




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