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876. カート・ヴォネガット 青ひげ (画家小説百選)

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ヴォネガットの長篇小説 「青ひげ」(1987) は、ラボー・カラベキアン=1916年生まれのアルメニア系アメリカ人画家の自伝という形式を取っている。カラベキアンは、アメリカの抽象表現主義の作家のひとりとして、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコなどの実在した画家たちといっしょに登場してくる。

驚いたことに、父もやはり芸術家として開花しはじめた。それまで、わたしの芸術的才能のよってきたるゆえんを考えて、これだけはまちがいない   この才能は父ゆずりではなく、また父方の家族からうけついだものでもない、と思っていた。(中略) 
ところが、いまになって父は、まるでトランス状態にでもあるように、ごく簡単な道具を使って、すばらしく美しいカウボーイ・ブーツをこしらえ、それをドアからドアへ売り歩きはじめたのだ。(中略)
しかし父の人生におけるこの新しい発展は、人が想像するほど、わたしにはうれしくなかった。
むしろ、気味がわるかった。父の目をのぞきこんでわかったのだが、そこはもう空き家になっていた。

何年かのち、わたしは同じことがテリー・キッチンの身に起こるのを目撃することになる。それまでの彼は、無二の親友だった。ある日、だしぬけに彼は絵を描きはじめ、そして今日ではおおぜいの人が、彼のことを抽象表現主義派最高の画家   ポロックよりも、ロスコよりもすぐれた画家と讃えている。
それはそれでけっこう。ただ、この親友の目をのぞきこんだときも、やはりそこが空き家だとわかったのだ。
(浅倉久志訳)


物語の基調は、いつものヴォネガットの作品と同じ、ほとんど軽妙で多少シニカルな悲喜劇ってところ。
しかし、同時に、この物語には、「生存者症候群」というテーマが潜んでいる。つまり、本当のことをいえば、これは画家小説でも美術史小説でもなく、「母なる夜」や、「スローターハウス5」等の作品と同じように、ヴォネガット風の"戦後小説"のひとつなのである。
でも、脅かすのはなしにしよう。ご心配なく。物語は、ちゃあんと大団円を迎えるのである。




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