879. マージョリー・ボウエン 看板描きと水晶の魚 (画家小説百選)

短篇小説日和


マージョリー・ボウエン (1886-1952) の「看板描きと水晶の魚」、
邦訳は西崎憲・編訳のアンソロジー『短篇小説日和: 英国異色傑作選』に所収。
文庫版で30-40ページほどの短篇であるが、独特のダーク・ファンタジー風の味わいが魅力的である。

「ドアの上に掛かっている看板は素晴らしいものじゃないか。あれほど見事な絵を見たのははじめてだ。色合いも口で云えないほど素晴らしい。あれはきみが描いたんだろう?」
「そうです、わたしが描きました」大して面白くもなさそうな口調でルシアスが応じた。
「ああいう物が欲しい」
ルシアス・クランフィールドは手を擦りあわせるのを止めた。
「同じ絵柄の?」
卿は眼を細めた。
「あの題材は変わっている。あの絵柄は何からとったのかね」
「人生からです」看板描きは云った。
(西崎憲訳)


主な登場人物は、ルシアス・クランフィールド(看板描きの男)と、フォンテイン卿の二人。
"登場人物"と書き、"二人"と書いてしまったが、実際には "怪しのもの" かもしれないと書いておいたほうがよさそうだ。
さらに看板描き(The Sign-Painter)とも書いたが、この男がほんとうにPainterなのかどうかもわからない。つまり、全体にようくわからない奇妙な設定の物語なのである。

わかるのは、この小説の味わいが極めて独特だということで、同じイギリスの同じ時代に黄金期を迎えた"怪奇小説"の作家たちとも違うし、さらに古めかしいゴースト・ストーリーとも、後のラヴクラフトやダーレス風の恐怖小説とも異なる。では何か?と言われても、それはわたしの方が訊きたいくらい。あえて言えば、ずうっと新しい時代のジョナサン・キャロルのダークさに似ているかなあ?そんなことを思った。



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。


関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク