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883. 北原亞以子 輪つなぎ/慶次郎縁側日記 (画家小説百選)

北原亞以子、あした


「輪つなぎ」(2008)は、慶次郎縁側日記シリーズの一篇。
作品集『あした』(2012)に所収。
この話の主人公は慶次郎ではなく、岡っ引の”蝮の吉次”である。
吉次が、ある女から相談を持ちかけられたところから、物語が始まる。

 嫌いな話ではなかった。いや、おおいに気に入った話であった。金を渡した相手が行方をくらましたので、探してくれというのである。
 まず、金さえ戻れば相手などどうなろうとかまわないというのがいい。さらに、その金は空巣でためたという打明け話が、吉次の心を揺さぶった。空巣でためた金を年下の男に貢いでしまうなど、今時めずらしい話ではないものの、それをあっさり岡っ引に打明けて、取り戻してくれという女の度胸というか開き直った強さというか、そういうものに吉次は感動してしまうのである。
「で、男の名前は」
「条吉。金を持って行方をくらますまでは、亭主だったんですけどね」
「今は」
「金を騙し取った、騙りの男」
(中略)
「それじゃ条吉の顔を」
「描いておきましたよ」
 おさわは立ち上がって、長火鉢の抽斗から半紙大の奉書紙をだしてきた。「ほら」と膝の前に置かれたそれを見て、吉次は舌を巻いた。絵師といってもよい巧みさで、若い男の顔が描かれていた。
「うめえものだな」
「当り前ですよ。錦絵の画工(えかき)になるつもりで、歌川派に入門したんだもの」

(北原亞以子、「輪つなぎ」 冒頭、新潮社)


時代小説に絵師が登場する作品は、幾つもある。魅力的な小説も多い。
その中で、慶次郎縁側日記のこの一篇を選んだのは、作品がこじんまりと気持ちよくまとまっていること、吉次が格好良く登場すること、そして、このシリーズ自体が終わってしまったことへの謝意のような気持ちからである。約20年に渡って書き継がれてきたこのシリーズも先日、最終巻が出版された。作家と作品に、多謝。



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