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★Bicycle deck (US PLAYING CARD COMPANY)

「バイスクル」(1885~)は、トランプの世界標準品である。有名なマジシャンが多く使っている。色柄の異なるバージョンがたくさんあるが、どれもジョーカーには自転車に乗ったキングが描かれている。もちろん、わたしの場合、それが好きな理由である。


31.jpg


大がかりな超魔術よりも、シンプルな(ちまちまとした?)奇術が好きだ。トランプ手品のようなやつ。それも、立派なステージではなく、殺風景な駅前でこども相手にマジックの種を売ってコインを稼ぐくらいの手品師がいい。

骨立った指が色鮮やかなトランプを扇にひらき、指先の一めぐりでまたこともなく閉じるうちに、そのカードは次第に生き物めいて身をくねらせる。用心しながら、おずおずと客の抜いた一枚は、たちまち束の中から迫り上ったり、別の客の上衣の裾から取出されたりする。煙草や銅貨の他愛もない出没は、いずれも種を知って見倦きている筈だのに、それがなぜこんなにも胸をときめかせるのか、米倉はいつも、つとめて無表情に、むしろ冷淡なふうを装いながら、手品師を囲む人垣のうしろに佇むのを好んだ。
一通り客寄せの芸を見せ終わって、さて種を売る段になると、集まった人々はすぐわらわらと風の中に散ってしまうのだが、そうなったときでも米倉は、帽子の廂をこころもち深く引下げるような気持で、少し離れたところに立止り、手品師のいくぶん哀しそうな表情を窃み見した。つい、いまのいままで、得意げな微笑を浮かべ、シルクハットに燕尾服さえ似合いそうに颯爽としていたこの男が、いまは何という憐れな、寒々しい様子で立っていることだろう。着ている服もひどく見すぼらしげに、木枯らしめいた風の中にひとりぽっちで唇を噛みしめている、これは遠いところから来た旅人だ。そして同時に、他ならぬこの俺なんだ。……
(中井英夫、とらんぷ譚)


単純な連想で「とらんぷ譚」という小説集を思い出して、引用してみたというだけである。もちろん、この手品師が使うトランプが「バイスクル」だといいなというのが、わたしの願望でもある。



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