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886. アラスター・グレイ ラナーク 四巻からなる伝記

Lanark,A Life in Four Books


「ラナーク 四巻からなる伝記」(1981)は、"アラスター・グレイのデビュー長篇にして代表作"と書いておけばいいだろうか。説明は難しいが、確かなことはこの小説がとても長くて荒唐無稽でややこしくて、しかしとっても面白いということである。

四巻からなるこの物語の、第一巻、二巻の主人公はダンカン・ソー (画家志望の少年)、第三巻、四巻はラナーク (記憶を持たない青年) 、    この二人がどういう関係にあるのかということを読み解いていくことが、この本の読者の特権ということになるだろうか。特権という言葉は愉しみと言い換えても、苦しみと置き換えてもよいものであるが。

 ラナークは頭を左右に強く振り、それからきっぱりと言った。「ぼくの過去について教えてもらえませんか? 幼い頃のことからすべて」
 声が言った。実はその手の仕事は大好きなのだが、何か手がかりをくれないと難しい。その過去に属するものを何か持っていないか? (中略)
 よろしい、過去への道が見えてきた。きみはソーという名前だった。さて、どこから話を始めようか。五歳か十五歳か十歳か、どこにする?
「五歳でお願いします」
 ラナークが横になって楽な姿勢をとると、お告げがませた子供のような声で話し始めた。ダンカン・ソーは紙の上のほうに青い線を引き、下のほうに茶色の線を引いた。茶色の線の上に、さらってきた王女を抱えて走る巨人の絵を描こうとしたが、どうしても美しい王女が描けないので、巨人に袋を持たせることにした。中に王女が入っているのだ。父親が   
 「ちょっと待って」とラナークが言った。「その出だし、少し唐突すぎませんか。・・・
(森慎一郎訳)


この画家志望の少年の肖像は、作家自身の経歴と重なる部分があるのだそうだ。
    つまり、こういうことか。奇怪で荒唐無稽の悪夢のような幻想譚と少年の初恋や友情や苦悩と愛の物語が混淆されたようなこの小説は、グレイの半自伝でもあると。

念のため補足しておくと、グレイは作家であると同時に本職の画家でもある。
この小説の原書も邦訳本も、表紙カバーや装画はすべて作家自身の手によるものだそうだ。
当たり前のことだろうが、どの絵も物語とぴったりの調子で、愉しみを倍加してくれるのである。



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