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887. ブライアン・オールディス ひたむきな画家/スーパートイズ (画家小説百選)

Brian Aldiss


オールディスの短篇 「三者三様の孤独」は、1. 裏返しの幸福、 2. ひたむきな画家、 3.話す立方体、という三つの物語で構成されている。SFではなく、シニカルな笑いを秘めたショート・ショートである。作品集『スーパートイズ』(2001)に所収。

海外でも、日本でも、SF作家の書く短篇は、どうしてこんなふうにシニカルな調子のものが多いのだろう。オールディス、然りである。星新一の作品のあのどこまでも醒めた視点はいまさら言うまでもないだろう。
   そして当然のことであるが、この掌編に登場する画家の男の物語にも、冷ややかな笑いとかなしみが込められている。

  アーサー・スカナーズマンはアンティーブを背にした丘の上に邸宅を買った。サンタバーバラの家は賃貸することにした。一度たりと出航しないヨットをニースで買った。ロンドンやパリやニューヨークで豪勢なパーティーを開いた。ラドクリフ診療所の跡地に新しい美術館を建てる費用として、オックスフォード大学に二百万ドルを寄付した。洋服は毎日買い換えられた。(中略)
  アーサー・スカナーズマンは人気のある画家だった。まだオックスフォードにいた時分からすでに有名になっていた。彼の描く絵画やスケッチには莫大な値がつけられた。映画やバレエの背景デザインには途方もないギャラが支払われた。そして彼の手がけるテーマは多種多様だった。彼にできないことは何もなすように思われた。スカナーズマンの名前はあらゆる人々の口にのぼった。
(「三者三様の孤独、2. ひたむきな画家」、中俣真知子訳)


これだけ上り詰めれば、男の行く末は決まりきっていると言ってもいいだろう。
予想通り、社交界からも美術の世界からも、彼は姿をくらますことになる。
しかし、オールディスが描きかったのは、さらにその後の男の姿である。
ノルウェーの小さな町に身をひそめた画家は、そこで何をすることになるのか?
物語は、冷笑を引き起こしそうなラインをぎりぎりで辿って行き、最後には読者をくすりと含み笑いに誘って閉じる。これぞ巧みの業というべきか。


AI.jpg


ところで、この作品集の標題作「スーパートイズ」は、映画 『A.I.』(A.I. Artificial Intelligence、2001)の原作である。
映画化を企画していたキューブリックが亡くなり、彼の生前の意向を踏まえてスピルパークが後を引き受けたという経緯があったらしい。だからどうだということではないのだが、やはりキューブリックの手による 『A.I.』を見たかったという気持ちはある。しかし、そんなことを言うのなら、リドリー・スコットが手がけたらどうなっていたのかだとか、あとからなら幾らでも妄言を付け加えることはできるのである。だから結局言っておくべきことはひとつだけだと思うことにする。わたしはこの原作小説が好きだ。




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