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72.アニター・デサイ デリーの詩人

「デリーの詩人」(1984)は、現代インド文学選集(めこん社)の一冊。
デサイは、インドとアメリカに住み、英語で小説を書いている。この小説の舞台は、インドのデリー、主人公は大学講師の青年デーベン。ふとしたことから彼は、有名な老詩人ヌールに会ってインタビューの記事を書くことになった。うまくいけば論文のひとつもかける、それに少額ながら金も稼げる、そしてなにより尊敬してやまない詩人に会うことができる、・・・そんな思惑を胸に詩人に会いに出かけたのであったが。

自転車リキシャに乗って家に帰る途中  足の力が奇妙に抜けてしまって、歩けそうもなかった  デーベンは手紙を開いた。手紙は英語ではなく、ウルドゥー語で書かれていた。自転車リキシャに揺られながら読んでいると、文字が目の前で気が狂ったように跳びはねて、めまいがしてきた。
鳩が死んで行く。鳥医者も知らぬ新しい病気が蔓延している。すでに、五羽死んだ。どれもすばらしいやつじゃった。残った鳩にも、灰色の黴が生え、頭に被さり、目を塞ぎ、くちばしを縫いつけ、爪と足に広がって、やがて死ぬまでゆっくりと喉を締めつけて行くのがわかる。治す薬もない。止まり木から次々と鳩が落ち、冷たくなるのをただ見ているしかない。最後の一羽が死ねば、永久に筆を擱く。鳩と共に逝く。
罪の報いに苦しむこの魂を救うには、もはやメッカへの巡礼に出るしかない。その手配をしてくれねば  
(高橋明訳)


実際には、老詩人に会い、インタビュー記事をまとめるためには気の遠くなるような作業が待っていた。家族や取り巻きの人間たちに法外な金品を要求され、理不尽な言動に翻弄され、記事の依頼主で友人でもあったはずのムラードにも振り回される一方。おまけに肝心の老詩人の方も、引用文にあるような身勝手な態度・・・。まるで悪夢に巻き込まれたように苦悶するデーベンの姿を、作家は、あたかも喜劇のような調子で描いていく。まるでこれがインドという世界の日常なのであるというように。



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